心臓手術後に運転はできますか?
A:正中切開手術を受けた方(胸の中央を切開した手術)は、胸骨が完治するまで約3ヶ月かかります。一般的には手術後1ヶ月程度から運転は可能ですが、事故や急ブレーキなどの衝撃で骨がずれる可能性があります。やむを得ない場合のみの運転に留めてください。低侵襲心臓手術(MICS)を受けた方の場合は、傷による活動制限はありませんが、体力の回復には個人差があります。退院後の運転の開始は主治医に相談した上で行いましょう。不整脈やペースメーカー治療をされた方は、道路交通法で運転が禁止されている期間がある場合がありますので主治医へ確認しましょう。
お酒は飲んでも良いですか?
A:アルコール性心筋症と診断された方の場合、飲酒は禁忌になります。また不整脈を誘発する可能性があるのでお勧めできない方もいます。量や頻度など主治医と相談しましょう。
一般的にはアルコールは血圧の変動や中性脂肪の上昇を招くため、過度な飲酒は心臓病の悪化のリスクとなります。飲酒をする際は週に2〜3日の休肝日を設けること、純アルコール量の摂取量が1日20g以下になるように心がけましょう。おおよその目安としては、ビール500ml、日本酒180ml、ワイン200ml、ウイスキー60ml、焼酎90mlです。アルコールの適量範囲の計算は下記を参考にしてください。
また、おつまみは脂質の多いものや塩分が濃いものは避けましょう。
※アルコールの適量範囲
お酒の量(ml)×アルコール度数/100×0.8(アルコールの比重)=純アルコール量(g)
心臓病のあとはいつから仕事をしてもよいですか?
A:いつから、どのように仕事に復帰するかは、その仕事の量や内容、通勤時間、通勤手段などを考慮する必要があります。心臓病と仕事を両立するためにご自身の体に合った方法が必要です。主治医や職場の産業医とよく相談しましょう。国からの支援制度もありますので、社会福祉士に相談するのもよいでしょう。
旅行に行っても良いですか?
A:旅行は普段の生活と違い、食事時間や活動量が異なります。また、ツアーなどを利用される場合は他人のペースに合わせてしまうと負担が大きくなる可能性があります。どの程度の旅行であれば可能であるか主治医と相談し、無理のないスケジュールを組みましょう。
海外旅行については緊急時に現地で医療を受けることに備えて【旅行用英文診断書】を持参することをお勧めいたします。ただし、平地での歩行で息切れなどの症状が出る方にはお勧めできません。冠婚葬祭などで遠方に行く必要がある場合などは主治医とよく相談してください。
飛行機に乗っても良いですか?
A:心臓の状態や治療状況によって判断が必要です。平地での歩行で息切れ症状が出る方にはお勧めできません。事前に主治医に確認しましょう。
飛行機を使用する場合は航空会社によっては診断書が求められる場合がありますので、事前に確認しておくとよいでしょう。また、事前予約で減塩食などの特別食を提供する航空会社もありますので活用するのもよいでしょう。
薬を飲み忘れた時はどうしたら良いですか?
A:飲み忘れに気がついたときに飲みましょう。ただし、1日の中で同じ薬を分けて飲んでいる場合や食事と関連がある薬の場合は特に注意が必要です。次の服薬時間が近い場合は忘れた薬は内服せず、次の内服分から服用してください。飲み忘れたからといってまとめて内服することは危険です。迷う場合は主治医に連絡し、対処方法を確認しましょう。飲み忘れる事が度々ある場合は、ピルケースやお薬カレンダーの活用をお勧めします。また、かかりつけ薬局に薬の管理方法を相談するのもよいでしょう。
薬はいつまで飲み続けるのですか?
A:心大血管疾患における内服は予防的かつ心保護作用を期待して行なっていることもあり、生涯飲み続けていただきたいお薬もあります。内服の中断が心臓病の再発につながる恐れもありますので、自身で判断せず主治医に確認することをお勧めします。
健康食品を利用しても良いですか?
A:健康食品に含まれる成分によっては、内服されている薬の作用を阻害してしまう可能性があります。健康食品のご利用を希望される場合は、その健康食品の成分表をご用意の上、主治医または、かかりつけ薬局に相談しましょう。
いつまで血圧や体重の測定を続けるのですか?
A:ご自身の体の状態の把握や適切な内服治療を行うために、家庭で測定する血圧・脈拍・体重の値はとても重要です。異常を早期に発見し、早期に受診行動がとれることが病気の悪化の予防となりなりますので、習慣化し生涯にわたり継続していきましょう。
お風呂に入る際の注意事項はありますか?
A:水圧、水温による血流変化を生じる可能性があります。一般的には38-40℃、10分以内の半身浴またはシャワー浴が推奨されます。前屈みになる姿勢は負荷になります。脱水予防として入浴前後に水分補給が必要です。手術後の患者さんは抜糸2日後から入浴可能であることが多いです。
性生活は可能ですか?
A:通常の日常生活(2.8Mets以上)が送れていればパートナーとの性行為は問題ありません。しかし、過度に興奮を招く行為は、過度に血圧や心拍数の上昇を招くので危険です。また、バイアグラなどの薬剤の使用は、主治医に相談しましょう。
心臓リハビリテーションとは何ですか?
A:心臓リハビリテーションとは、有酸素トレーニングやレジスタンストレーニング(筋力トレーニング)などの運動療法を中心に、患者教育やカウンセリングなどを包括的に行うことで心血管疾患の再発予防を目指すプログラムのことです。生活の質(QOL)や長期予後の改善、心血管疾患の予防を目指すという概念も含まれ、病気の発症直後の急性期から退院後の生活期に至るまで、生涯にわたる継続的なプログラムになります。
心臓リハビリテーションはどこで受けられますか?
A:ご自身のかかりつけ医で受けられるかどうか、対象となるかなど、主治医や医療スタッフに確認してみましょう。心臓リハビリテーションが受けられる施設は、日本心臓リハビリテーション学会のホームページでも公開されています。(施設によって実施形態が異なる場合がありますので確認が必要です。)また、心臓リハビリテーションは開始から150日間は健康保険が適用されます。それ以降については主治医に確認してください。
心臓病後の運動はどのようにしたらよいですか?
A:運動の種類は有酸素運動(ウォーキングや自転車こぎなど)が推奨されています。運動の強さは体が「楽である〜ややきつい」と感じる程度で、誰かと会話をしながらでも続けられる程度です。ウォーキングであれば歩く速さの調整などで運動の強さを調整します。運動の時間や頻度は、30〜60分程度の運動を週3〜5回程度が推奨されていますが、今まで運動習慣が全くない方であればまずは短時間(20分程度)で週1、2回程度から始めてみてください。
一方で、上記の内容は一般的に推奨されている内容のためすべての患者さんに当てはまるものではありません。心臓の状態や手術の内容によっては適切な運動内容も変わってきます。かかりつけの先生や手術をした病院で「心肺運動負荷試験」や「心臓リハビリテーション」を実施しているようであれば、ご自身の状態にあった適切な運動強度の設定(運動処方)が可能ですので一度相談して頂くことをお勧めします。
運動するときに気を付ける事はありますか?
A:安全に運動を行うために、以下の点について気を付けましょう。
- 運動前後に血圧、脈拍を測定し、水分補給を行う
- 運動しやすい服装や靴を着用する
- 夏場は涼しい時間帯、冬場は温かい時間帯に行う
- 急激な心臓への負荷を避けるため、ストレッチや軽い体操などの準備体操と整理体操を行う
胸痛や息切れ、だるさ、体重増加(3日間で2kg)、睡眠不足等の自覚症状がある場合は心臓病が悪化している可能性があるため、運動を控え、かかりつけ医を受診することをお勧めします。
ペースメーカー植え込み後はどのようなことに注意すればよいですか?
A:以下の項目に注意しましょう。
- 運動について
器質的な心臓病の合併症が無ければ、身体活動において特別な制限はありませんが、退院後1~2ヶ月は手術した方の腕を大きく動かしたり、背伸びをしたりするのは控えましょう。手術した方の腕を激しく動かすスポーツは3ヶ月後から可能です。但し、体同士が接触したり、皮膚を損傷したりする可能性のあるスポーツの実施は注意が必要です。
- 家電製品について
ほとんどの家電製品は、通常の使用方法であれば影響を与える事はないと言われています。一部のIH炊飯器や電磁調理器、全自動麻雀卓などは使用することで影響が出る場合があります。
- 医療機器について
MRIやX線、X線CT等はペースメーカーへ影響を及ぼす場合があります。医療機関を受診する際は必ず、ペースメーカーが入っていることをお伝えください。また、お店の入り口などにある電子商品監視機器は電磁波がペースメーカー作動に影響を与える場合があります。
- 旅行について
飛行機を利用する場合は、空港にて磁場が発生する金属探知機を使用する場合があるため。ゲートを通る際にペースメーカー手帳を提示し、ボディチェックで依頼する事が望ましいです。また、旅行先で受診する必要が出てきた場合を想定し、病院検索や情報提供書など準備しておくことが望ましいです。
- 運転について
失神の有無などで運転に制限が出てくる場合があります。主治医へ確認しましょう。