Q.自己紹介をお願いいたします。
溝口泰樹です。鹿児島県出身です。昭和40年代生まれで蟹座のA型です。今日はよろしくお願いします。
Q.ご自身の病気について、また、これまでに受けた手術について教えてください。
病名は『三尖弁閉鎖症(Ⅰc型)』です。右房と右室の間にある三尖弁が全く形成されておらず、大きな心室中隔欠損と肺血流増加の為肺高血圧を合併していました。
手術歴は、5歳の時に肺動脈絞扼術(PA Banding)、10歳の時にフォンタン術(modified Fontan)、13歳の夏休みと春休みに1回ずつグラフト置換術、そして、30歳の時には心房細動が頻回に起こったため、TCPC手術を受けています。
ワーファリン服薬のため、好物の『納豆』に別れを告げ、大好きな「ネバネバ丼」はオクラと山芋で堪能しています(もちろん生卵をのせて)。
Q.病気のことは、周囲の方にどのように伝えてますか?
職場は、第二の故郷である、自分を手術してくれた榊原記念病院です。主治医に協力を得てここで働かせていただいているので、自分から特に伝える事もなく理解し、受け入れてもらっています。
現在の生活の中では、自分が心疾患であることを知ってもらう必要があると思った時には話をしています。特段、心疾患を隠すつもりもないし、わざわざ言うこともないと思っています。
でも、榊原では、心疾患のお子さんを持つご両親へは何でもお答えしていますよ。
Q.学校生活や友人との間で困ったり、苦労したことはありますでしょうか?そんな時、誰かの助けを借りたことはありますか?工夫したことについて教えていただけますか?
心に残っている、中学時代のエピソードが一つあります。ある日のこと、心疾患と思えない体格もしていたのもあり、ちょっとヤンチャな子に体育の授業も受けず楽をしていると思われたのか、「なぜおまえは体育を受けないんだ」と言われたことがありました。私は自分の受けた手術の傷を見せ、「俺は心臓が悪くて手術を受けている。だから授業が受けられない」と返しました。それ以来その子は何も言わなくなったということを今でも覚えています。
普段の学校生活では、小、中、高とも体育の授業はほぼ見学、水泳の授業ももちろん見学でした。心臓に疾患を持っているといっても、見た目だけでは中々理解して貰えないことも多々ありました。
運動会では徒競争やリレーに参加できず、活躍の場がなく寂しい思いもしました。
でも両親が私の体の事を理解してもらうため、担任を通じて学校としっかり話してくれたことを覚えています。鹿児島という田舎(?)ということもあったのか、皆、私のことを理解し受け入れてくれました。
今も昔も、一番の助けは両親だと思っています。両親のお陰で、友人にも恵まれ今の生活があると思っています。
Q.自身の進路選択の際、どのように決めてこられましたか?
幼いころから、なりたい職業はたくさんありました。バスの運転手、お医者さん(入院中に読んだ野口英雄の影響)、その他色々。高校も一応進学校に入る事ができ目標に向かって頑張っていましたが、高校3年生のある時、今まで向かっていた進路とは全く違う夢(野望)が芽ばえ、両親に伝えました。もちろん両親は大反対。でも反対にめげず、着々と準備を進め最後は両親を根負けさせ資金を頂きいざ上京!とにかく野望のために、頑固に自分の道を開き決めていった!って感じです。
「こんなに苦労して育てたのに、さっさと上京していったよねぇ~」と今でも母親に言われています。
高校3年生の時に芽生えた夢(野望)はどうなったかは内緒です。
Q.現在の職業につかれて、楽しいことややりがいを教えてください。
自分の命を救っていただいた病院で、自分と同じ心疾患を持つ子供たちを、微力ながらも病院スタッフとして支え、働けることが大きなやりがい、誇りになっています。
業務上、小児科病棟へ行く機会がたまにあり、治療に頑張っている子供達を見て自分が入院していた頃を思い出しています。そして、子供達やご両親と時々会話を交えながら、心の中で早く元気になってねとエールを送り、そして、子供達から逆にエネルギーを貰えています。こんな職場の環境にとても感謝です。
Q.これから大人になる子どもたち、ご家族の方に応援メッセージをお願いいたします。
なんで自分は心臓が悪く生まれたのだろう、なんで心臓の悪い子を産んでしまったのだろうと思う時があるか、これからそう思う時が来るのか分かりませんが、これからの生活、考えることがたくさんあるのではないでしょうか。私もいっぱい考えさせられました。そして、今でも常に考えています。
先天性の心臓病といっても病名も違い、生活の制限、治療、病状は人それぞれだと思います。私の抱える同じ三尖弁閉鎖症でもそれぞれ違います。
人は皆それぞれの人生を歩んでいます。心疾患でも、他の障害を持っていても、健常者でも。
これからの生活、他人と自分を比べる日もあるかと思います。他人と比べた時辛い思いをすることもあるかもしれません。でも、これだけは思っていて欲しいです。決して自分だけが辛い思いをしているのではないということを。
だから、他人と比べるのはやめましょう。ありきたりの表現ですが、泣いても、笑っても、他人と自分を比べても、心疾患は消えません。この病気は乗り越えるというより、上手に付き合っていくのが私は得策と思っています。
心臓が悪いから何かができないではなく、心臓が悪くてもこれはできるというものを見つけていきましょう。
ご両親の方々も、お子さんのこれからの成長でいろんなことがあるかと思います。でも決してお子さんに申し訳ないとか思わないでください。せっかく生まれてきたお子さんのためにも、病気を受け入れ、一人の人間として生きていけるように育ててください。お子さんが得意とする何かを見つけてあげてください。まずは、心疾患を自身で認め、受け入れていくところから始めましょう。
最後に、自分がこの病気に対し弱音を吐いたときに母から言われた言葉を送ります。
『心臓は悪いけど、自分に負けるな、病気に負けるな』