重症の僧帽弁閉鎖不全症の患者さんで、外科手術が困難とされていた方に対する新しい治療法です。
MitraClip ®(マイトラクリップ)を用いた経皮的僧帽弁接合不全修復術は、僧帽弁閉鎖不全症に対する、新しく、画期的な治療法です。内服加療のみではコントロールが困難で心不全発作を繰り返す患者さんや、標準治療である外科手術のリスクが高いとされる高齢者が対象になります。
欧州で2008年にCEマークを取得し、2013年に米国で開胸手術の適応とならない器質性僧帽弁閉鎖不全症患者の治療用として、FDA(米国食品医薬品局)の承認を取得しました。これまでに、約10万人の方が治療を受けています。
日本では2017年に認可され、2018年4月から治療が開始されています。当院は日本における治験段階から参加し、以来、治療の実績を積み上げてまいりました。
進行した場合、心不全や不整脈をひき起こす可能性があります
僧帽弁閉鎖不全症は、僧帽弁がうまく閉じないことで起こる進行性の疾患です。高齢になるほど増加する病気で、高齢化が進む日本では、患者数が増加しています。動悸・めまい・息切れ・むくみなどが起こりますが、初期症状が現れにくく、軽症であれば自覚症状はありませんが、進行した場合、心房細動という心不全や不整脈を引き起こすことがあります。
僧帽弁は、血液の逆流を防ぐ役割があります
僧帽弁は、心臓の左心房と左心室の間にある2枚の弁で構成されています。肺から左心房に戻った血液は、僧帽弁を通過した後、左心室を経て全身に送り出されます。心臓の拍動によって、左心房から左心室に血液が送られるのに合わせ開閉していますが、僧帽弁閉鎖不全症では、うまく弁が閉じることができず、血液の逆流が生じます。
<イラスト提供 アボットメディカルジャパン合同会社>
MitraClip® は、従来の方法で治療が難しかった方への新しい治療の選択肢です
高度の僧帽弁閉鎖不全症の患者さんを対象に行う治療です。カテーテルを用いて、僧帽弁をクリップでつまむことで、血流の逆流を改善します。人工心肺は用いず、心臓は止めずに治療を行うことができます。
症状の程度が比較的高い方は、従来、外科手術で治療を進めてきました。しかし外科手術を安全に受けることができない方(心機能が低下している、合併症がある、肺気腫などの呼吸器疾患または肝硬変、胸部に放射線治療歴がある高齢の方)にとって、MitraClip® は有効な治療の選択肢となります。
<イラスト・画像提供 アボットメディカルジャパン合同会社>
当院では現在、「MitraClip® G4システム」を導入しています。
MitraClip® 治療は、脚の付け根(そけい部)からカテーテルを静脈に挿入し、右心房や左心房を経て、逆流を起こしている僧帽弁に対してクリッピングを行います。開胸は行いませんので、傷は1センチ程度で済みます。
<イラスト提供 アボットメディカルジャパン合同会社>
病状によりますが、標準的な入院日数は4泊〜7泊程度です。退院後は、外来によるフォローアップを行います。
MitraClip® は、主に上記のようなメリットがあります。
外科手術のように胸を大きく切開せず、また、心臓を停止させる必要がありませんので、患者さんへの負担を少なくすることが可能です。また、結果的に入院期間も短くなります。
さらに、比較的高齢の方や肝硬変などの心臓以外の合併症があるハイリスクな方も治療が可能になります。
当院では、高度なカテーテル治療の技術を持つ循環器内科医、心臓外科医、麻酔科医、心臓画像診断専門医や、ME(臨床工学技士)、看護師、放射線技師、その他コメディカル、事務職員など、様々な職種の専門家によるハートチームを形成しています。
循環器内科 部長
髙見澤 格
循環器内科 医長
樋口 亮介
循環器内科 医長
泉 佑樹
心臓血管外科 成人 主任部長
下川 智樹
平日9:00~16:00にお願いいたします。
平日の9:00~17:20、または 毎月奇数週の土曜日の9:00~13:00にお願いいたします。