医療者からのメッセージ 第3回 上田 知実 医師

第3回 小児循環器科 上田 知実 医師 「手術を乗り越えた患者さんの元気な姿に勇気をいただいてます」

小児循環器科の上田 知実です。
私は先天性の心臓病により深く関わる医師をめざして榊原記念病院の門を叩きました。
榊原でさまざまな患者さん、さまざまな病気と出会い、気がつけば十余年がたちました。自分が専修医のころから複数回に及ぶ手術を乗り越えられた患者さんが元気に外来を受診される姿に、いつも勇気を頂いています。

-先天性の心臓病に対する医療の変化

このわずか十年ほどで、先天性の心臓病に対する医療は大きく変化しています。手術や管理の技術的進歩による救命率の向上も大きな点ですが、胎児診断が産科の先生方に浸透し、生まれて初めて大きな心臓の病気が見つかるという時代ではなくなりました。私たちがはじめて接する患者さんも胎児スクリーニングである程度診断がつき、お母様と(おなかの中で)産科に入院され、出産と同時に治療を開始させていただく患者さんがほとんどです。

産科医・胎児診断医の出生前の詳細な説明もあり、出生時に我々がさせていただく説明の際には、ご両親がお子様の心疾患について驚くほど深くご理解されている方々が多い印象です。

-病気の治し方は人の数だけあるべき

某製薬会社のCMで、きれいな女優さんが階段を下りながら語りかけます。
“同じ病気だとしても患者はそれぞれ別の人間です。病気の性格も薬のきき方もみんな違う。治し方は人の数だけあるべきじゃないですか”
このCMは、まさに先天性心疾患の治療を表しているなーと感じます。

同じ診断名がついた患者さんであっても、お顔と同様、心臓にもそれぞれに個性があり、その血液の流れの理解は先天性の心臓病を専門にする小児循環器医であっても複雑困難です。我々も日々の研鑽に努めつつ、必要に応じ、柔軟に他院の意見(セカンドオピニオン)も参考としながら当院を選んでいただいた患者さんに、よりよい治療を提供していきたいと考えています。

小児循環器診療から成人先天性心疾患診療へ

無事手術を乗り越えられた皆様が、成長発達、就学を経て社会の歯車のひとつとして生活していただくことも、我々のこれからの重要な課題です。病気自体のフォローのみでなく、皆様をとりまく環境の整備もこれからの大きな課題と考えています

当院の強みとして、成人循環器医療との連携が挙げられます。小児科、外科、内科を含めた成人先天性心疾患チームを結成し心臓病と一生向き合っていただく皆様、ご家族ととともに寄り添っていければと考えています。

どうかお気軽にご相談ください。