※「年齢に合わせた取り組み」の文中の「新生児・乳幼児期」「思春期」を加筆しました。(1/5)
生まれるお子さまの約100人に1人の方が、生まれつき心臓病を抱えています(これを先天性心疾患といいます)。近年は医療技術が進歩し、多くのお子さまが成人期を迎えるようになりました。
先天性心疾患のお子さまが、成人になって社会生活を送るためには、お子さま自身が病気とうまく付き合っていけるようになることが大切です。そのためには、お子さまだけでなく、ご両親やごきょうだいも一緒に考え、ともに「ステップアップ」していく必要があります。
病気をうまく管理しながら、一人ひとりが、笑顔で自分らしい人生を歩んでいきましょう。
人は生まれてから社会に出るまでに、さまざまな段階を経ることで、一人前になります。個人差や個別の事情はありますが、家庭の中だけの生活から、幼稚園や保育園、学校へと順番にステップアップし、集団生活を楽しむことを覚え、社会のルールや人間関係の協調性を学びながら、社会へ出ることになります。心疾患のお子さまは、治療や病院のサポートをこの中に適切に組み込んでいく必要があるといえます。
成長過程におけるそれぞれのステップで大事なことをまとめました。
成長に合わせて心掛けていくとよいことを表にしました。ぜひ、参考にしてください。
こちらからダウンロードできます。
近年は、新生児期・乳幼児期に手術を行うことがほとんどです。1回で終える手術もあれば、何回もの手術を必要とする病気もあります。
手術があるときは、とにかく、お子さまの命が助かるよう願い、療養生活を必死に頑張られることかと思います。でも、育児は普通に大変なことですし、だれもがすぐに親になれるわけではありません。祖父母や友人ら先輩の親御さんにアドバイスをもらったり、病気があることで頼りにくいことがあれば、看護師や地域の保健師さんへ遠慮なく相談し、頼ることが大事でしょう。
退院後は、両親(ご家族)が、「いつもと何か違うな」と感じたときが相談のタイミングで大丈夫です。繰り返し、相談することで、お子さまの状態について、一番わかるようになってきます。
●健診について
生後1か月にお子さまとお母様の様子を診るための1か月健診があります。その後の乳幼児健診は、自治体によって回数が異なることがありますが、3~4か月、1歳半、3歳のときには必ず行われます。自治体から連絡がありますので、もし入院中の場合はその旨伝えてください。
●予防接種について
予防接種は、病気に対する免疫をつけたり、強くするためにワクチンを接種し、病気から個人を守るものです。また、ワクチンを受けられない人に感染させてしまい、社会に病気が蔓延することを防ぐことも目的の一つです。心臓病のお子さまは、感染症が重症化しやすいため、積極的に予防接種が推奨されていますが、術前術後や輸血後には、主治医の相談が必要です。
お子さまがお子さまらしく学校生活を送ることができるよう、お子さまにあった教育が受け、自立する力をつけていけると良いでしょう。
●就学先決定について
小学校の通常学級だけでなく、通級学級も選択する、または特別支援学級や特別支援学校を選択することもあります。本人・ご家族からの意見をよく聞きながら、市町村の教育委員会が統合的に判断します。秋ごろの学校説明会の前に、「就学相談」ができるので、就学に不安がある方は、市町村の教育委員会に相談すると良いでしょう。相談申し込みは、4.5月から始まります。
●就学にあたって
心臓病への理解がすすむように、学校の先生方に病状説明や具体的な支援についてお話しましょう。心臓病に対して、過剰な心配や制限がかかる場合は、主治医や地域の教育センター相談員、特別支援学校のコーディネーターに協力してもらうとよいでしょう。
●自立に向けて
お子さま自身が、自分の病気を徐々に学びながら、友人や先生に伝えることができるようになれるとよいでしょう。できること、できないことも伝えることも大切です。小学校高学年になれば、お子さま自身が、クラスの友人に説明することも、体調管理も自分で決めることができると良いですね。
この時期は、「大人になる」ための準備をする時期です。本人は、なんでも自分でしたい欲求と、親や他者に依存をせざるを得ない現実との間で自分探しをしながら、もがく時期です。両親(ご家族)にとっても辛いと感じることもありますが、成長の過程として必要な時期ですから、乗り越えられると信じて、歩めるとよいでしょう。
●病気と付き合うということ
大人になって社会に出るということは、付き合う相手(人)のことも良く知る必要があります。そのためには、まず自分のことを相手に知ってもらうことが大事です。病気のことだけでない、得意なことや苦手なことなど自分自身のことを知り、自分で自分の身体と上手に付き合い(セルフケア)、先輩や同級生ら仲間と話しをする機会をどんどんもっていきましょう。
●自分らしさを大切に
心臓病は、同じ病名でも一人ひとり心臓の状態は違いますし、育った環境や自分自身の経験も皆それぞれ違います。必要とする人がいることを忘れずに、自分らしくあれる将来を描けるとよいですね。
●子離れと親離れが必要
両親(ご家族)は、子どもが自立することを意識しなければなりませんし、本人は自分の病気を理解しながら、病気と向き合うことも必要となります。両親は、これまで我が子の命だけでなく、ご自身らの自責の念とも向き合ってきたことと思います。今までも、そしてこれからも「守らなければ」ならないと思うことは当然のお気持ちです。ゆえに、いろいろなことを両親が担っていくこともまだあるかもしれませんが、大人になってゆく我が子の自立に向けては、「見守る」ことが大事です。そうすることで、子ども自身がこれまでの経験を力と変え、セルフケアができるようになり、自分の仲間とのコミュニティを広げていくことでしょう。